活動報告

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2019年 活動報告

06月 記念講演

  第35回総会 第2部 記念講演
 「京都をモノづくりベンチャーの都に」

講師:株式会社Darma Tech Labs 代表取締役 牧野 成将氏(モノづくり起業推進協議会会長)
会期:2019年6月6日(水)  実施時間:16:00〜17:00
会場:リーガロイヤルホテル京都

牧野氏がデジタルファブリケーションの活用と普及に、京都市、ASTEM、京都リサーチパークと共に「Kyoto Makers Garage」を開設したのが2017年。現在は新たに、3Dプリンタやレーザーカッター、CNCスライス、検査装置などが自由に活用できるスペースで、使い方のレクチャーやワークショップを展開。そんな現場から、新たなモノづくりへの重要ポイントの講演をお願いしました。

 モノづくりに大きな地盤変動が起きているというという指摘から講演は始まりました。具体的には①デジタルファブリケーションの普及、②クラウドファンディングの台頭、③インターネットオブシンクスの出現です。一つ目のデジタルファブリケーションは3Dプリンタ、CNCフライス、レーザーカッター、ロボットアーム、センサ、3Dスキャナなど新たなモノづくりの機器です。二つ目のクラウドファンディングは新しい資金調達の手段、三つ目がIoTと称されるソフト/ハード融合によるビジネスモデルの創出です。
 先ず、クラウドファンディングの事例としては、スマートフォンなどを用いてクレジットカード決済をするスクウェア社の開発のための資金集めを紹介。モノづくりが低価格で可能になってきた新たな時代の潮流を提示します。また、2009年に設立されたクリエイターがプロジェクトを実現するための資金を世界から募ることのできる世界最大のファンディングプラットフォームも取り上げ、これまでに40万以上のプロジェクトが総額3700億円を調達していることを注視してほしいと語ります。さらに、クラウドファンディングは応募者がそのまま見込客であることも大きなメリットとして挙げます。インターネットオブシンクスの一例としは、スマートフォン、フィトビット、スマートスピーカーを明示し、インターネットとハードウェアの新たな融合が大きな可能性を秘めていると提言します。
 クラウドファンディングは起業家にとって極めて有効な資金調達手段ですが、大きな課題がありました。「死の谷」と称される量産化試作の壁です。85%前後の企業が困惑しており、牧野氏も米国で「日本ではこの問題をどのようにして乗り越えているのか」という質問を多数受けたとふり返ります。ここで着目したのが2001年に京都の中小企業が立ち上げ、現在50社以上が加盟する京都試作ネットでした。2015年に京都試作ネットと連携してハードウェアスタートアップ向け支援プログラムとして「MAKERS BOOT CAMP」を開設しました。業務分野は①MBC試作コンサルティング、②量産化試作with京都試作ネット等、③MBC試作ファンド(20億円超)、④MBCサプライチェーン実施です。MBC試作コンサルティングではスタートアップ時の諸課題をテクニカルメンバーがサポートし、50社以上の試作支援を実施。量産化試作ではスピーディに少ロット生産を実現し、試作ファンドでは国内9社、海外(US)10社への投資を実行。サプライチェーン支援でも1万台以上の量産化もサポートしています。
 これらの新しい動きに私たちは情報の大切さを思い知らされることとなりました。私たち京都市ベンチャービジネスクラブは、今年度の基本方針一つである「チャレンジ精神あふれた起業家との交流」を推進していく大きなきっかけにしたいと考えています。


牧野 成将氏


講演会の様子

03月 講演会

  第2部講演・セミナー
 「伝統の技を世界で売る方法
         〜ローカル企業のグローバルニッチ戦略〜」

講師:株式会社日吉屋 代表取締役 西堀 耕太郎氏
会期:2019年3月8日(金)  実施時間:18:00~21:00
会場:京都リサーチパークKISTIC 2階

日吉屋5代目に就任したのが29歳。廃業寸前の「京和傘」の老舗をグループ会社全体で約150倍の売上高にした西堀耕太郎氏。その起点となったのは「和傘を照明に転用できないか」という閃きだったという。海外市場に果敢に挑み、大成功した貴重な日吉屋メソッド。その全てを聴講しました。

 西堀氏が日本を客観的に捉え、独自の伝統文化を見詰め直す契機になったのがカナダ留学でした。世界各国から留学生が集う人種のるつぼトロント大学で、多大な刺激を受けます。帰国後、地元の新宮市役所の職員になったものの、後に妻となる日吉屋の次女と出会い、京都に居を構えることになります。彼女の実家は江戸時代後期から160年以上続く「京和傘」の老舗でしたが、年商100万円台の赤字続きで廃業寸前。留学をきっかけに「和の伝統美」に心惹かれていた西堀氏は、状況の打開にインターネット通販に取り組みます。ITが脚光を浴びる少し前の1997年頃でした。この目論見は功を奏し、自身も和傘づくりに打ち込むようになり2003年に日吉屋5代目に就任します。
 「ネット受注も頭打ちになるだろうと」いう不安を抱きながら仕事を続けていたある日、突然、「和傘を照明に転用できないか」という着想を得ます。手漉きの和紙を通して降り注ぐ優美な光が導いた閃きでした。以来、試行錯誤を繰り返しながら商品開発に没頭。その結実である「古都里━KOTORI━」を海外で問う日が2008年に訪れます。フランスのパリ郊外で開催される世界最大級のインテリア&デザインの見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展。京都商工会議所が中核となって「京都プレミアム」の名の下に公募で選出した作品を展示会に送り込むことがきっかけでした。更に、翌月のドイツ・フランクフルトで開かれるインテリア・生活雑貨の展示会「アンビエンテ」にも参加。しかし、国内でグッドデザイン賞特別賞を受賞した「古都里━KOTORI━」の海外初の試みは不発でした。作品としての評価は高かったものの、「小さ過ぎる」「明る過ぎる」と指摘されます。電圧の違いや欧州の安全規格基準もクリアする必要があったのです。学んだのはローカライズの大切さでした。しかし、その一方で幸運もありました。「アンビエンテ」主催会社の副社長が「古都里━KOTORI━」」に目を留め、同社開催の展示会「テンデンス」に招待してくれたのです。課題を踏まえた改良品は脚光を浴び、初めての海外取引が実現。翌年には「ニューヨーク国際現代家具見本市(ICFF)」の日本のパビリオンに出展。新製品で素材にスチール+ABSを用いた可変照明「MOTO」が2010年にグッドデザイン賞、2011年には世界最高峰のデザイン賞「iF Product Design Award(ドイツデザイン賞)」も獲得します。
 「作り手が良いと考え、作りたいものを作るプロダクトアウトではなく、外部のプロフェッショナルと組み、市場のニーズを的確に捉えたマーケットインのものづくりを追求し、海外市場ではグローカリゼーションに徹する。目指すのはグローバルニッチトップ、世界におけるオンリーワン」と西堀氏は熱く語ります。そのために「まず自社の存在価値を見出し、明確な企業理念を打ち立てることが重要」で「国内外でメディア露出を高めることによってブランドストーリーを訴求すべきだ」と西堀氏は提示します。 このような成功戦略を基に、日本の伝統工芸や中小企業の海外向け商品開発、販路開拓を支援するための㈱TCI研究所を2012年に設立。サポート実績は100社以上とか。2015年に、パリに約180㎡のショップとショールームを兼ねて『アトリエ・ブランマルト』を展開。国内の優品をプロモーションし、海外デザイナーとの共同商品開発などを推進。活躍はこれからも広がります。


西堀 耕太郎氏


講演会の様子

02月 講演会

  第2部講演・セミナー
 「これまでのインド、これからのインド」

講師:株式会社ジャパンディア 代表 伊勢 司氏
会期:2019年2月19日(火)  実施時間:18:00~21:00
会場:公益財団法人京都高度技術研究所10階

インドのバナーラス・ヒンドゥ大学大学院で観光経営学とヒンディー語を学んだ後、京都でインバウンド・アウトバウンド事業・レストラン事業に加え、インドでのビジネスサポート事業を展開。「日本とインド、人をつなぐ」をモットーに活躍する伊勢司氏に、インドビジネスの課題と展望をお聞きしました。

 伊勢氏が初めてインドを訪れたのは10歳の時。ヨーロッパやアメリカは旅していたものの、この地は別格で大きなカルチャーショックを受けます。例えば、ムンバイの通信事業などで大成功した社長が約650億円で建設した60階建ビルに住み、他方、貧民街には映画『スラムドッグ$ミリオネア』で描かれたような人々が洗濯などを生業にひしめいる。「その格差に愕然とした」といいます。その後、同志社大学商学部の学士論文で『訪日旅行者誘致・インド人旅行者誘致における今後の展望と課題』をテーマに選択。1ヶ月間のインドの現地調査実施をきっかけに、観光と言語を本格的に学ぶためにバナーラス・ヒンドゥ大学大学院で観光経営学とヒンディー語に取り組みます。帰国後の2015年に㈱ジャパンディアを設立し現在に至っています。

 インドの国土面積・人口は日本の約10倍で、29州の文化・習慣は異なり、言語も多様で、宗教も多様です。経済の発展は「1991年に貿易自由化が実施され、2005年頃から日本企業も進出するようになりますが、当時は267社で大企業のみでした。それが2013年には1038社、2018年には1441社となり、拠点数も5102に達している」といいます。業種的には金融業、製造業(主に自動車)、卸業・小売業、サービス業の順で、中小企業では製造業が多く、売上高は約1~50億円(2012~2013年度)程度。
 次にインドでの事業展開の課題は何か。「①関税・貿易の規制、②質の高い人材確保の困難さ、③納期の延滞、④電力・物流の税率、⑤地場企業との競合などである」と指摘します。ちなみに、2017年の関節税率大改革でビジネスがし易くなっているといいます。
 続いて、注目すべき点は「人口です」と強調します。2014年の約12億5千万人が、2019年の現時点で約13億6千万人に急増。2030年には約15億人、2050年には16.6億人を予測。さらに、経済発展に直結する平均年齢も若く、2030年の時点で約31歳、2050年でも約38歳を想定。日本の平均年齢30~40歳時代の経済成長を思い起こさせます。
 「最後に、注意すべきことがあります。地域格差が非常に大きいので、どのようなビジネスをするかでターゲットとする地域を慎重に選択しなければならないということです」と、伊勢氏は締めくくりました。その後、講演はパネルディスカッションに移行し、「法律上のトラブル事例」、「インド進出時の注意事項」、「工場建設の状況」、「言語の問題」など具体的な内容に関して討議が行われ、その熱気は懇親交流会にも持ち込まれました。


伊勢 司氏


講演会の様子①


講演会の様子②


ディスカッションの様子①


ディスカッションの様子②

01月 講演会

  第2部講演・セミナー
 「『大学の成果、知見をどのように活用すればよいのか?』
   ━産学連携の現状と課題━」

講師:京大オリジナル株式会社 代表取締役社長 宮井 均氏
会期:2019年1月22日(火)  実施時間:18:00~21:00
会場:公益財団法人京都高度技術研究所10階

次代に向けて卓越した独自技術や新たな付加価値を創出するために、今改めて「オープンイノベーション」が注目されています。今回は京都大学100%出資の事業子会社で産学連携と研修講習事業を推進する、 京大オリジナル㈱代表取締役社長の宮井 均氏をお招きして大学の成果・知見の具体的な活用法をお聞きしました。

宮井氏は京都大学大学院(電気工学)修了後、NEC(研究開発、PC事業)を経て2013年から京都大学URA(工学)で産学連携などを担当し、昨年6月に設立された京大オリジナル㈱の代表取締役社長に就任されました。京都大学には産学連携本部の子会社として、高まるオープンイノベーション、リカレント教育などのニーズに積極的に応えるために設立されたのが京大オリジナル㈱です。産業界との技術シーズ連携を推し進める『コンサルティングサービス』と対する課題解決、事業テーマや戦略の課題探索まで多角的に展開。研修・講習サービスでは特定(企業)向け専門講座、企業・大学との連携研修、一般向け教養講座など多彩に展開しています。

現状は「極めて多様なニーズに応えている」といい、京都大学には人文社会系から理工系、医薬系まで約50の部局があり、「ものづくりであれば工学研究科。注目のAIであれば情報学研究科の知能情報学。アジア・アフリカ系に関する問合せも増加している」といいます。また、文理融合・学際領域も注目されており、ブロジェクト例としてはインフラ防災、劣化メカニズムなどを研究する『インフラマネジメント』や『超高齢社会デザイン』、最先端の人工知能研究や機能性食品・医薬品の新シーズの創出を目指す生理化学研究など、「理系から文系まで幅広い分野を網羅している」とのこと。京都大学の研究者は全学で約3000名。オープンイノベーションに積極的に対応してくれる研究者は3分の1の約1000名とのこと。「まずは先生に意見(考え方)を求める方法もあります。これなら容易に応えていただける研究者が多いからです。研究者はサブテーマも手掛けており、この部分でマッチングする可能性もあります。更に、他大学のテーマでマッチングすることも少なからずあり、問合せスタイルもさまざまです。いずれにしても、テーマを絞り込むほど良い成果をえることができる」と強く言います。大学で基礎研究を行い、ベンチャー企業が開発応用し、企業が事業化するという方法も増加しているそうです。「大学の成果、知見の活用にはノウハウが必要です。だから、まず京大オリジナルに相談してほしい」とKVBC会員企業へ宮井氏から熱いメッセージをいただきました。


宮井 均氏


講演会の様子①


講演会の様子②